2007年3月7日10:41 PM
"Blue In Green" By Miles Davis
Album:"Kind of Blue"
"Kind of Blue"をどのように日本語に訳するか?ずいぶん考えました。今風にいえば「ブルーな感じー」とすればそれで、通用してしまうのでしょうけれど、違いますよね(^_^;)
私は、アルバム全体の流れからして、「唯ぼんやりとした不安」がもっとも相応しいのではないかと考えました。そうです。あの芥川龍之介が、彼の遺書に著した「唯ぼんやりとした不安」です。それだけ、重たい題目をここでMilesが掲げた理由は?その理由を見いだすことができるのが、今回の"Blue In Green"と云う数あるJazzのバラードの中で、最も超然とした美しさと崇高な輝きを放つ曲ではないかと。
"Blue In Green"これも、日本語にするのが難しいですよね。「緑の中の青」本当はこのようにただ単に色彩表現なのかも知れません。しかし、聞けば聞くほどイメージが脹らんでいくのもこの曲の偉大なところです。
私なりの解釈では、明らかにGreenは、嫉み・妬み即ち嫉妬、或いは猜疑心を表す色です。その状況下にあるBlue即ち憂鬱。要は、万人が人である限り持つ闇の部分。人が自制心を失う動機付けの代表格。しかもそれは確たるものではなく漠然とした思いこみであったり妄想であったりと、得体の知れない化け物のようなものです。"Blue In Green"とはその理不尽のお化けと戦い、もがき、勝利する見込みもなく苦悩に溺れた状態なわけです。
勿論、私はMilesがこの状態を"Blue In Green"で表現していると言っているのではありません。全くその逆で、得体の知れない化け物や理不尽のお化けと正面から対峙しているのです。言葉の持つ言霊をしても浄化困難な醜い感情を音楽であるが故に在る魂で平静を人々に齎す事こそがこの曲の真意であると私は確信しています。
コンセプトメーカーとしてこの様な究極のリーダーシップを実現したMilesに対して、集結したメンバーたちは珠玉のアンサンブルで応えたのは当然の帰結だったのでしょう。未だに聞くたびにJimmy Cobbのブラシワークには戦慄を覚えますし、Bill Evansも本当にこの曲が好きに違いありません。でなければ、彼自身の最高傑作"Portrait in Jazz"で、"Blue In Green"take2とかtake3とか収録しないですよね・・・?
時を重ねると共にその存在がより深く醸成されていく・・・・ "Kind of Blue"は言葉では尽くせないそんな奥行きのある作品です。機会があれば他の曲についても触れたいと思います。 いやー お世話になってます。"Kind of Blue"
そして、これからも。