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孤高なる狩猟的音楽家→高橋悠治

05 3月

2008年3月5日8:56 AM

高橋悠治/solo
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"竹田恵子+高橋悠治" デュオ・コンサート
2008年3月4日火曜日19時
於:兵庫県立芸術文化センター

それにしても、壮絶な読譜力である。

高橋悠治氏が楽譜を追うその目は、恰も狩猟家が「狙った獲物は決して逃さない」といった正にハンターのものでした。一旦ピアノからはなれると柔和な高橋悠治氏のパフォーマンスは真剣勝負そのものです。

高橋悠治/ケージ:プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード 先日「阿佐ヶ谷の「律&あみこ の怪しい夜」」で田川律さんに、「今度西宮で高橋悠治のコンサートがあんねん。ぶたかん(舞台監督)やんねんけどけーへんか?」と言っていただき、二つ返事で「はい」と返事させていただきました。前回の「阿佐ヶ谷の「律&あみこ の怪しい夜」」エントリの中でも申しておりましたように、その昔John Cageなどと共にこよなく高橋悠治氏の作品を愛聴していた私としてはとても楽しみにしていた昨日のコンサートでした。(写真左は、その昔よく聴いていた"高橋悠治/ケージ:プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード"

コンサートは、「詩人、ミューズのお気に入り」(シューベルト 作曲、ゲーテ 詩、林光 訳)で幕を開け、12歳でその命を絶った岡真史氏の詩による歌曲「僕は12歳」と続く。

そして、この日強烈な印象として残った楽曲は「冬のロンド」。大逆事件に連座した花作りの古川大作の生涯を描いた水上勉の戯曲「冬の棺」の音楽を再構成した作品とのこと。この冒頭に演歌師添田唖蝉坊の「ああ金の世」の最初の一節を高橋悠治氏自身が朗読

ああ金の世や金の世や。地獄の沙汰も金次第。
笑うも金よ、泣くも金。一も二も金、三も金。
親子の中を割くも金。夫婦の縁を切るも金。
強欲非道と譏(そし)ろうが、我利我利亡者と譏ろうが、
痛くも痒くもあるものか、金になりさえすればよい。
人の難儀や迷惑に、遠慮していちゃ身がたたぬ。

この戸島美喜夫氏が作曲した楽曲は、インストゥルメンタルだったのですが、歌詞はなくともその表現力は時代は変われど変わらない人の姿をまざまざとリアルに音で再現した、感銘を受けざるを得ない秀逸なものでした。と言うかなんだかこの曲を聴いた後、世の中を達観してしまうような、そんな気持ちになる只単に感動といったのとは違う類の不思議な後味でした。

真のオリジナリティを追求される高橋悠治氏の音楽。本日の公演を見て、日本が世界に誇ることが出来る数少ない芸術家である事を再認識しました。同氏は1938年のお生まれなので今年で70歳ですが、まだまださらなる活躍をされることを希望します。

最後に、田川律師匠にこの素晴らしいコンサートへ御招待いただいたことへ感謝をお伝えさせていただきます。田川さんありがとうございました。

 
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