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鬱然として豊潤の名作「東京物語」

12 3月

2013年3月12日12:19 AM

小津安二郎監督が世界的に評価されている監督だと知ったのは遡ること28年前ロードショウでヴィム・ヴェンダース [Wim Wenders]監督の『パリ、テキサス』”Paris,Texas,”と二本立てで同時上映されていた『東京画』を見たことが最初だったと記憶しています。Ry Cooder "Paris, Texas"
icon最近偶々ライ・クーダー[Ry Cooder]の”Paris,Texas,”のサウンドトラックに収録されている回想場面で流れる印象深い楽曲"Cancion Mixteca"を聴いた機会にその様なことを思い出しました。

I am listening to Ry Cooder "Cancion Mixteca" from Paris, Texas
iconそして、久々に「東京物語」を見ることにしました。『東京画』で、ドイツ人であるヴィム・ヴェンダース [Wim Wenders]監督が、フランス語で何を訴えたかったのかを再認識したかったのです。

この映画が封切られた昭和28年といえば、まだ戦後間もない時期ですが、それでも、私が生まれる10年前です。尾道から蒸気機関車で上京する場面は私が幼少の頃、蒸気機関車で父の実家である和歌山県有田市へ行った時の情景とダブります。

蒸気機関車は無駄に迫力があって、良かったです。蒸気機関車のあの汽笛の音を聞くと未だに、まだ川で鮒が泳いでいた頃の自然が美しかった父の故郷を思い浮かべます。東京物語
icon蒸気機関車もさることながら、やはり改めて目を見張ったのが人間描写でした。中でも、尾道市在住の72歳の老人、平山 周吉を演じた笠智衆さんの演技は笠智衆さんが「東京物語」撮影時49歳だったとは思えない人間の深さを表現しています。

『東京画』の笠智衆さんインタビューを見るとわかりますが、小津安二郎監督は本番で20回ダメ出しが出るぐらい徹底的に自分が納得行く演技を求めたと同氏はインタビューで答えています。笠智衆さんの演技力は並大抵ではありませんが、自分が描いた構図の中に配する役者達への小津安二郎監督が持つ人間洞察力に基づいた演技指導力にはそれこそ鉄の意志的なものを感じます。

鬱然とした人間が持つ内なる世界を映像として、徹底的に具現化しようとした小津安二郎監督をドイツ人であるヴィム・ヴェンダース [Wim Wenders]監督が、フランス語でなぜ紹介しようとしたのか未だに解せないその謎の一部が今回「東京物語」を久しぶりに見て少しだけ見えたような気がしました。

 
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Posted in Movie, music

 

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